【昭和基地】南極観測隊、夏隊が別れ越冬隊30人【維持】

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南極･昭和基地で活動を続けている61次南極観測隊(青木茂隊長)の夏隊と越冬隊の別れの季節が来た。夏隊は観測船しら
せに乗り込み帰路へ。越冬隊は次の隊が来るまでの1年間、30人だけで基地を維持し、観測を続ける。隊員たちは期待や不
安、それぞれの思いを胸に、短い南極の夏の終わりを迎えている。
｢元気でがんばれ！｣。4日、昭和基地のヘリポートで夏隊員と越冬隊員は固く手を握り、抱き合った。61次隊は昨年11月
末に日本を出発し、年末に昭和基地に到着した。季節は夏、気温は0度前後で、吹雪もない穏やかな天気が続く。観測隊は
氷河や地形などの観測、地震計などのデータ回収や整備で各地をヘリコプターで飛び回り、基地では輸送や建設などの作
業に追われた。寝る間も惜しみ、力を合わせた仲間との別れに涙があふれる。
｢また会おう｣
夏隊の樋口実佳さんは｢南極に来たのは夢だったのかと後で思いそう｣と目を潤ませた。東北大職員で庶務隊員公募を知っ
て応募。念願のペンギンに出合い、南極らしい風景を味わえたのはひとときだった。基地では出入りが激しい隊員の人数
を把握し、食事数の調整や連絡などに追われる日々。そんな姿を見ていた越冬隊員たちは、見送りの際、｢胴上げしよう｣
と取り囲んだ。ヘリポートで小さい体が高く舞った。
半世紀近く使われた気象棟の解体、新施設に気象観測用気球を上げるデッキの取り付けで働き続けた建築担当の鯉田淳
さんは、南極5回目のベテランだ。資材も道具もそこにあるものだけ。工期も短く、手伝う隊員の大半は素人だった。で
も、一人ひとりができる仕事を探して動く姿に、南極ならではの一体感が忘れられなくなる。｢また来たい。帰りたくない
な｣
長い冬を基地で過ごした60次越冬隊31人もしらせに乗り、総勢68人が帰路に就いた。3回目の越冬を終えた気象チーフ
の藤田建(たつる)さんは｢日本に帰りたい気持ちもあるけれど、いつかまた何か『忘れ物』をしたような気持ちになっ
て、来たくなってしまうんだろうな｣と振り返った。
近くに停泊するしらせから迎えに来たヘリコプター最終便は爆音をたてて飛び上がる。見送りに集まった61次越冬隊員
は、激しい風に飛ばされそうになりながら懸命に手を振り続けた。
しらせは再びトッテン氷河沖へ向かい、氷の消失と海の関係を探る観測を往路と違う場所で行う。海底堆積(たいせき)物
採取など海洋観測後に帰路へ。3月19日に豪州シドニーに入港、隊員らはそこから空路で帰国する予定だ。
基地には、筆者を含め越冬隊の30人が残った。これから1年間、物資補給はいっさいなく、持ち込んだ食料や燃料で生活
し、観測を続ける。何があろうと帰国する手段はない。
青山雄一隊長は｢孤立した小さな島に30人だけになった。いろんな作業があり、どれも一人ではできない。協力し合って1
年間のりきりましょう｣と隊員たちに語りかけた。
(昭和基地=中山由美)

朝日新聞デジタル

南極観測隊、夏隊が別れ　越冬隊30人が昭和基地を維持：朝日新聞デジタル

　南極・昭和基地で活動を続けている61次南極観測隊（青木茂隊長）の夏隊と越冬隊の別れの季節が来た。 ...

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